21世紀をたのしむ「昴」俳句会
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星霜集 早瀬 秋彦選
2008-10-30-Thu  CATEGORY: 昴 9号
星霜集  早瀬 秋彦選

余生  大竹 仁
撫で肩の余生となりし更衣
余生なほ目立ちたがりや葱坊主
花菖蒲にはか絵師にはなりきれず
短距離の選手さながら羽抜鳥
愛憎をかくしきれずに飛ぶ螢
地に触れし千古の時空藤の房
百声の蛙田水の張りにけり

絵馬  小山 けさ子
ひと間だけともりてをりぬ寒椿
若人の書く絵馬瞳輝きて
野島崎の白き灯台寒明くる
沈丁の香に目覚めたる通夜帰り
剪定に消えゆく枝の行方かな
鶯や雨後の修善寺坂がかり
遠野火の能登千枚田鳶の笛

夏衣  鈴木 八重子
マラソンにふくらむ街や山笑ふ
約束を違へし昔鳥雲に
若葉風老いらくの身に沁み透る
新茶くみ同じこと訊く人とをり
枷を負ふあきらめの日々蝸牛這ふ
気構へも新たに衣更へにけり
淡泊に生きて八十路の夏衣

春の月  井上 元
連翹の風に乱るる花明り
大和には御仏多し春の月
亡き夫と茶を汲む八十八夜かな
流れくる神輿納めの木遣唄
菅公の「断腸」の詩碑藤白し
渡月橋を渡る下駄の音夏の月
新緑や奇岩さばきの櫂軋む

春の雪  石井 深也
病床の妻の戯れ言春浅し
湯豆腐をつつき世相を憂ひをり
荼毘を待つしじま明りに春の雪
菜の花の広がる果てや海光る
亀鳴くや老いの一念ゆらぎをり
ゆつたりと知りゆく余生山笑ふ
陽炎に己れの老いを見つめをり

花時計  國分 利江
算盤の梅雨にきしみし五つ玉
馬買ひの車きてゐる母子草
足長の蜘蛛の織りゆく幾何模様
春雷にはげしく踊るフラメンコ
北国のサルビアあかり花時計
梔子や夫に語らぬ事もあり
聖書あるホテルの机五月尽

花水木  林 美智子
春一番埴輪もまぶた閉づるやも
折りがたき早蕨深く頭を垂るる
川痩せて片州に春の番鴨
花冷えや風車は要閉じしまま
中天に風押し上げて花水木
菜の花やゆるきカーブのローカル線
夕菅や山湖音なく帳ひく

春朧  久保田 シズヲ
芽柳のほぐれて風の生れにけり
切り株の程よき座席落花浴ぶ
大梯子立てゝ庭師の音さやか
春泥の轍の光る坂がかり
出合ひより別れの多き花の冷え
笹鳴きの影なき声を聴いてをり
余生とは未知の歩みや春朧

若葉光  田中 洋子
宅配夫忽と消えたる夜の朧
幼ナ顔のネクタイ赤し卒業す
フェルメールの少女振り向く若葉光
薄目して鳥海山の笑ひをり
莢付のグリンピースや春浅し
娘がくれしカーネーションの青さかな
身ほとりに母ある気配夕河鹿

梅雨  伊勢谷 峯雨
グラスに映るテレビの影や梅雨の夜
梅雨銀座万華鏡めく尾灯かな
梅雨空の暗きをよぎる燕かな
火取虫翅音たかく落ちにけり
五月雨やときに明るき空の色
五月雨に音なく夜の明け染めし
エジンバラの五月の空やバクパイプ

泉  篠崎 啓子
源流は一樹の下の泉かな
点と線のリハビリ一日雨蛙
獣めく人の行き交ふ町薄暑
ゴンドラに委ね入笠遠郭公
縄文人踏みし捌けみちえごの花
廃校の校門鉄棒草いきれ
雨乞ひに加はる陸軍伍長の碑

晩年  原 繁子
晩成と褒めそやされし朧かな
晩年の掌に春光を火種とす
落慶の春蒼天に鴟尾光る
われを待つ人亡き生家梨の花
戦知らぬ子に語りやる子供の日
メロディーを奏でる絵本さくらんぼ
傘立てに杖もまじりぬ夏期講座

白絣  鈴木 昌子
吹かれゐる白寿の叔父の白絣
花愛でし句友黄泉路へ花の雨
子には子の生き方もあり蓮如の忌
曇り日の多摩丘陵の梨の花
介護して暮らす余生や菊根分
大寒や球たま子こ富嶽へかけ昇る
藤囲む課外授業の子供達

風光る  伊澤 トミ子
もう一度朧の中を逢ひに行く
春深し心淵覗くルオーの画
蕗みそや老いて優しき夫となり
風光るフランスパンと笑ひ声
義仲が駆けし信濃路麦の秋
薔薇散つて献体の時迫り来る
薔薇剪つて別れ話を呑んでゐる

羽抜鶏  谷口 秀子
肩張つて孤独に耐ふる羽抜鶏
仮の世のえにしは淡し鳥帰る
戦争を知らぬ成人式の群れ
寄り添へるもののぬくもり彼岸寺
落城の悲話ある里の桜かな
いくさなき空の輝き鯉幟
出かけゆく二つ返事や春日傘

花みかん  矢野 欽子
澄み渡るチャペルの鐘や春浅し
平戸瀬戸の著き潮目や春浅し
リラ咲くや彼の世の兄の呼ぶかにも
石倉は閉ざされてをり花みかん
子雀のぶつかりながら飛び立ちぬ
大楠の暗がりに消ゆ白き蝶
桐の花正倉院へつづく道

花いばら  木島 幸子
若水の一人茶を点つ安堵かな
白梅や心の棘を悔いてをり
だしぬけに闇のつぶてや春の雹
生かされて一期一会のさくらかな
若鷲のかへらぬ基地やさくらしべ
干潮や孤愁の舟に花いばら
陽炎へる船見つめをり葬終へて

皇居東苑の桜  藤原 香人
春光や厚き扉の桔梗門
馬酔木咲く皇居東苑奉仕人
花ぐもりあをき甍の宮内庁
春の空円しと見上ぐ紅葉山
大内山神のお庭も花ざかり
山下通り桜吹雪の中に佇つ
春昼の遠松風や二重橋

夏柳  福冨 清子
花愛でしひとの通夜なる朧かな
花大根紫けぶる工科裏
勿忘草一鉢ほどの拠り所欲し
春惜しむ古書肆あるじの伏目かな
夏柳オフィーリアの指触るるほど
白山に対してはづすサングラス
終の栖に日々の自在や夕河鹿

十字花  今井 千穂子
汚れなき家族の祈り十字花
白牡丹近づき難き風纏ふ
河骨や一輪天に押し上ぐる
うなだれて咲き落ちてなほえごの花
壺の碑の涙の跡や若葉雨
花屑や瑞鳳殿の鬼瓦
ユングフラウへ次郎の墓碑やお花畑

鳶の輪  渡辺 二郎
捨てまじき傘寿の一徹梅ひらく
地下鉄を乗り継ぎてゆく櫻狩
千鳥ヶ淵の戦没慰霊碑花の雨
春風や身重ナースの夜勤明け
鳶の輪の影の茶店や活き白魚
尿量記入が予後の日課や花水木
一つ家に別離の夫婦菜種梅雨

水温む  吉田 美智子
寒暁の海輝くや漁り舟
泣き虫のここ一番や春相撲
子の顔の泥乾きをり水温む
すかんぽやいがぐりおかつぱとうせんぼ
真青なる空に浮かびし花水木
医者めざす娘の真顔梨の花
麦秋や糸のきらめく糸電話

麦の秋  西田 綾子
ミステリツアーに連れ廻される四月馬鹿
逃げ水や異次元の口開いてをり
SLの煙まみれの花薊
疲れ来し肩寄せ合ひぬ初つばめ
春眠に神の揺らめき道後の湯
鯛さばく春爛漫の讃岐かな
木曾谷の明るくなりし麦の秋

亀鳴けり  橋 みえ
長生きの悲しみ深く亀鳴けり
泥羽根の濡れ光りをり初燕
難聴の耳に問はれし花の冷え
サッカー場の空つつ抜けに揚雲雀
橋いくつ数へて渡る麦の秋
古りし名の多き山里柿若葉
変声の子らの寡黙や若葉風

油照  平野 欣治
老境の二人で聞きし閑古鳥
侘しさや墓苑の森の時鳥
逆縁に我が建墓して油照
そら豆をむく妻の指萎久し
老残の従軍語る夏の宿
病葉や生きて耕土は人の手に
逝きし子の早き一年盂蘭盆会

水温む  山森 千佳代
光り矢に龍の息吹きや春の闇
五平餅の火にかざす手や春浅し
紙飛行機の来てゐる広場水温む
富士に来て心ふくらむ木の芽どき
すかんぽや玉川上水晴れ渡る
こごみ採る顔にかかりし蜘蛛の糸
風鐸に雲行く影や花薊

一つ紋  山口 梅子
花こぶし結納交はす一つ紋
初刷や生きざま熱き同窓誌
娘の顔に似て来し兎年の餅
霜柱みちくさ園児のくつが鳴る
衒てらひなく語らふ友やふきのたう
無我夢中に生き来て枯野見つめをり
しつかりと生きゆく私からすうり
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昴題詠  夏帽子、蟻  早瀬 秋彦 選
2008-10-29-Wed  CATEGORY: 昴 9号
昴題詠  夏帽子、蟻  早瀬 秋彦 選

 道官 佳郎
天守堂に脱ぐ夏帽子耶蘇の島
あと戻り出来ぬ歳月蟻地獄
ほととぎす流人の墓に島の酒

 篠田 重好
麦藁帽冠りしルノアールの女
麦藁帽買うて火の山登りけり
蟻達が豆の芽囃し踊すなり(熊谷守一の絵より)

 岡田 律夫
蟻の行絶えずラインの源流地
使命あるごとく碑攀づる蟻
夏帽子かむり若やぐ母なりき

 小林 量子
悩みなどないとうそぶく夏帽子
蟻走る義経奥州首途かどでの地
未練断つ背を向けてをり夏帽子

 長沼ひろ志
黄泉を知る蟻ン子なれば傷めざる
天金の書を抱くをとめ夏帽子
麦稈帽父坐すかぎり壁にあり

 西村 友男
蟻地獄人の裏側見えかくる
わが過去を鏡に問ひし夏帽子
戦争の紙面を過る蟻の列

 伊藤美沙子
山蟻の鞍馬に義経飛翔石
蟻の群れよろめき出づる爆心地
日光月光をろがむ老いの夏帽子

 仁木 孝子
蟻の門と渡り「田舎教師」の墓の前
夏帽子夫の枢に杖もそへ
一言が心残りの夏帽子

 森田 幸子
夏帽子虚勢の貌をうづめ来し
晩学の終り見えざり蟻の列
正夢はなべて速足蟻の塔

 神戸 和子
マネキンの斜めにかぶる夏帽子
着流しにカンカン帽の父の影
時を惜しむ働き蟻の定めとて

 星 道夫
担ぐ蟻手ぶらの蟻のまじりけり
紙飛行機蟻を散らして降りたちぬ
夏帽子むかしの空は青かつた

 岸本 正子
玉の井や夏帽よれにし荷風の影
白蟻の巣くふ胸内や流行追ふ
銀座暮色夏帽斜はすの父の影

 伊澤トミ子
夏帽子サントワマミー唄ふ母
高原のおしやれの極め手夏帽子
夏帽子青春の傷残しをり

 森 万由子
蟻の世も人の世に似て列を組む
さよならとそれつきりなる夏帽子
特命のありしか蟻のUターン

 齊藤眞理子
椰子の葉の夏帽子編む昼下がり
ユーカリと赤き蟻塚コアラの地
見はるかす赤銅色の蟻の塔

 高松 守信
畑仕事夏帽子の影黒く添ふ
おのが道探して一途迷ひ蟻

 小林貴美子
家なく墓なき故郷に脱ぐ夏帽子
蟻の列祈りの相伝受けてをり

 藤原 香人
夏帽子抱きてめぐる薬師寺展
扁額を拝す門前蟻の列

 久保田シズヲ
一人旅派手を承知の夏帽子
頭はち合せ蟻にも礼儀ある如し

 國分 利江
蟻二匹這ひ登りゆく磨崖仏
母呼べば子等のかけゆく夏帽子

 吉田美智子
入日中鉄塔を行く蟻一つ
兄弟の車窓に並ぶ夏帽子

 藤沢 正幸
夏帽子見渡す海の真つ平
蟻の道みな大いなる物かつぎ

 大竹 仁
余生とはあみだに被る夏帽子
組織論蟻に学びし戦中派

 山地 定子
お似合ひのひと言で買ふ夏帽子
蟻の穴覗いてみたき地下組織

 内藤 潮南
釣宿の宴の席や蟻の列
信濃路を列なし行くや夏帽子

 小能見敦子
旅支度妹の形見の夏帽子
大物の獲物曳きゆく蟻の列

 會澤 榮子
蟻の列昭和天皇記念橋
颯爽と飛行機へ乗る夏帽子

 今井千穂子
安曇野の百円バスや夏帽子
出逢ひ頭人生を問ふ蟻の列

 土田 京子
手拭ひを取り夏帽の父来たる
ひそと告げし蟻あり列の乱れゆく

 渡辺 二郎
夏帽子くるり振向き笑まひける
走る蟻人は五欲の迷ひ道

 相澤 秀司
夏帽子馭者の隣りで娘が手振る
草刈るや新し巣穴に蟻の列

 西田 綾子
車椅子夫婦揃ひの夏帽子
飽きもせず子は見てをりぬ蟻の道

 小山けさ子
閉じ込めし千曲の風や夏帽子
退院の一歩に絡む蟻の列

 田中 洋子
医師の話ぢつと聴きゐる夏帽子
辿り来しわが道程や蟻の列

 北島美年子
夏帽子大釘ひとつ残りけり
蟻塚をなだらかにして雨上がる

 福冨 清子
人工衛星まだ捉へずよ蟻の道
日光月光御前に脱ぐ夏帽子

 佐々木久子
チョモランマへ聖火かざして蟻の列
戻りきし我が愛用の夏帽子

 石井 深也
髪の毛の長き女の夏帽子
行列を時には外れる蟻のをり

 鈴木 昌子
箒目を素早く通る蟻の列
父と子の生活にも馴れ夏帽子

 井上  元
夏帽子あたまの記憶かさね来し
石山寺いしやまの石に思案の蟻一匹

 齊藤 良子
ほゝ笑みがこぼれて居りぬ夏帽子
蟻消えし庭のとまどひ逝く昭和

 原  繁子
手負鴨に近づいて行く夏帽子
生涯に一度の誉蟻の道

 木島サイ子
会釈して去りゆく街の夏帽子
急ぐ蟻コロリ掃かれて今朝の庭

 木島 幸子
墓石古りふるさと遠き蟻の道
くやしさを空に投げたる夏帽子

 本田ハズエ
夏帽子若くつくろふ媼達
蟻走るとどまる所決めかねて

 平野 欣治
黒蟻の歩みの早さ飛ぶごとく
夏帽子洗ひざらして二十年

 高橋 みえ
弟をいつもかばひて蟻の列
パナマ帽の父の若き日怖がりし

 鈴木八重子
蝶の死を葬るがごとく蟻の列
焦りなどないと言ひきる夏帽子

 高梨 豊子
草原の風が欲しがる夏帽子
行軍の靴音聞こゆ蟻の列

 中島 勝郎
オープンカーに頬吹かれをり夏帽子
不連続ながら違へず蟻の列


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光芒抄  早瀬 秋彦 抽出
2008-10-29-Wed  CATEGORY: 昴 9号
光芒抄  早瀬 秋彦 抽出

コーランや隊商宿の夕薄暑  大島 道雄
人生の午後は未知数心太  星  道夫
耳遠き夫を追ひゆく羽抜鳥  會澤 榮子
藤咲くやハイデルベルクの白い壁  石塚恵美子
白日の富良野が叫ぶ麦の秋  佐々木久子
座繰糸引きゐし母よ汗光り  早瀬 安女
水温む役目果せし温首相  柴田千鶴子
老鶯や生き長らへて友葬おくる  川崎 忠康
売られゆく牛の長啼き梅白し  木島サイ子
鵜戸山の閻魔の眼冴え返る  水元 榮子
永訣の白寿の化粧冬晴るる  本田ハズエ
花影に目白のひそむ家路かな  藤原 淑子
繰り返すこの世の節目更衣  原  里歌
ケアハウスに帰心の老いや春浅し  島田ミネ子
帰る日の近き白鳥嘴上げて  立川 明朗
故郷の祭の知らせ届きたる  樋口 栄子
メトロ降り祭囃子の中にをり  内藤 潮南
春光や母の残せし和綴の書  山地 定子
散骨を望む母なり花吹雪  北島美年子
屋久島へ遺影連れゆく夕薄暑  小能見敦子
触るるものみなやはらかし山若葉  藤沢 正幸
単衣着てオペ待つベンチ言葉なく  中島 勝郎

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光芒集  早瀬 秋彦 選
2008-10-29-Wed  CATEGORY: 昴 9号
光芒集  早瀬 秋彦 選

麦の秋  大島 道雄
霾るや砂漠に消えしロプノール
襟足に香水てふ武器滴らす
青垣の山野辺の道風薫る
サンバ響くメリケン波止場夏きざす
コーランや隊商宿の夕薄暑
一郷の寺と檀家や麦の秋
武者返し日は赫赫と蟻の列

涅槃西風  星 道夫
涅槃西風クレーンの鉄鎖ゆれやまず
大仏の耳が大きくアマリリス
大仏殿に初夏の日ざしを受けて立つ
風が地を離れて白きすひかづら
人生の深みの色の夏落葉
人生の午後は未知数心太
桐の花また桐の花試歩の道

連翹  會澤 榮子
耳遠き夫を追ひゆく羽抜鳥
納骨をすませて来たる麦の秋
荒川の源流暗し谿若葉
花冷や予後のCT内視鏡
連翹をまぶしみ垣を曲りけり
身から出し錆数へをり亀鳴けり
うぐひすや錦江湾の朝ぼらけ

藤咲くや  石塚 恵美子
高枝に小鳥さへづる花曇
水仙や一輪挿しの南部鉄
藤咲くやハイデルベルクの白い壁
バラ添へし英国からのカード来る
北沢に豆腐売り来る木の芽どき
春眠の子を家に置きバスを待つ
筑波路に連なる墓や麦の秋

麦の秋  佐々木 久子
白日の富良野が叫ぶ麦の秋
広め屋が車で通る麦の秋
別所線の一両電車麦の秋
玉杯の歌遥かなり春の月
連翹や斑ら明りの播磨坂
晩酌の父の独白河鹿笛
禅寺の雑木の黙や鐘おぼろ

新茶の光  早瀬 安女
トマト食む少女や瞳輝かせ
老いてなほ虚飾の性さがや汗匂ふ
供へたる母の好みし新茶の香
鯉幟勇気を競ふ里の子等
座繰糸引きゐし母よ汗光り
大蓼や地に働きし悔あまた
梅干しの味深まりし朝餉かな

水温む  柴田 千鶴子
道端に今年も咲きし菫かな
土筆摘み袴はぎ競ふ童かな
水温む役目果せし温首相
跳ねて来る新入生のランドセル
桜咲いて人影搖らぐ目黒川
薊咲く夢よ再びキャンディーズ
化石てふ曙杉の木の芽かな

友の死を悼む  川崎 忠康
また一人昔甲飛の桜散る
柔やわら猛も者さ惜しまれ召さる走り梅雨
老鶯や生き長らへて友葬おくる
五月雨や通院澁る病める妻
春風や過疎化の里に家普請
花ふぶき浴びゆく児等のランドセル
老いらくの昔語りや花筵

花あかり  木島 サイ子
売られゆく牛の長啼き梅白し
くぐりてもくぐり抜けても花あかり
母の日の母とはなれずバラの部屋
世に未練なきごとくなり春落葉
天心に月あり森のコンサート
ハーレムの丘に溜まり場野馬肥ゆる
墓参して遠まはりする菊日和

鵜戸山  水元 榮子
若水を汲むや気持ちを引き締めて
節分の護摩の炎明り弾け飛ぶ
山削るショベルの響き春近し
鵜戸山の閻魔の眼冴え返る
梅咲くや鵜戸にあまたの磨崖仏
春浅き水辺明りに鷺一羽
手の甲に老い兆しをり山笑ふ

白寿の化粧  本田 ハズエ
永訣の白寿の化粧冬晴るる
錦秋の七浦峠眩しかり
溜池の浅にけむる蜷の恋
鰤大根好みの味に夫笑顔
笑みあふる米寿の姉や万年青の実
弥五郎の昔語りやゆきもち草
過疎の地の風はらみをり鯉のぼり

目白  藤原 淑子
恋ボタル遠くなりけり畦の闇
かすむ空白き波あり都井岬
春浅き生命輝く双葉出づ
春闘にこの世の地獄見つめをり
花影に目白のひそむ家路かな
様変る世の暗転や春嵐
式終へし安堵や雪の浅草寺

更衣  原 里歌
葉から葉へサーカスに似て青蛙
繰り返すこの世の節目更衣
我も行く君の語りし紫陽花路
ながながと猫のびきつて昼寝かな
自動車のライトに浮かぶ曼珠沙華
銀漢や義理てふ重きものありぬ
小苺や障害の子の目の愛し

ケアハウス  島田 ミネ子
ケアハウスに帰心の老いや春浅し
老い母のミシンの音や春浅し
見守れるわが家の歴史雛飾る
湯豆腐に過ぎゆく刻を惜しみけり
若水にいのちみなぎる生花群
春風や干されて踊る白タオル
水餅やレシピに悩む主婦あまた

函館  立川 明朗
春吹雪たちまちかすむ五稜郭
函館の雪残る坂領事館
祖父在りし函館教会春の日に
帰る日の近き白鳥嘴上げて
花の下輪になりはぬる園児たち
えごの花散り初め星座見るごとく
新緑や母に抱き付く女の子

祭の知らせ  樋口 栄子
吹かれつつ木の芽の光る播磨坂
枝先の匂ひに咽せて剪定す
家ごとの夕餉の匂ひ春の月
路地裏に咲く連翹の花明り
常備薬飲み忘れたる別れ霜
九重の大吊橋や滝光る
故郷の祭の知らせ届きたる

夏祭  内藤 潮南
半月に響く夜宮の手締めかな
メトロ降り祭囃子の中にをり
雷門揃半纏神輿渡御
路地行くや母子で引きし山車の列
仲見世を坩堝と化して神輿揉む
二の腕を見せて解きける祭髪
祭髪解きて少女の顔となり

春光  山地 定子
無き智恵を絞りて一句春灯
挙手の礼して友征きぬ昭和の日
手話の娘の舞ふ様な指春温し
レトロなる路面電車や五月来る
落人の影曳く里や月朧
春光や母の残せし和綴の書
鑿跡も粗き佛像春灯

新緑  北島 美年子
ペンギンのごと歩む児や山笑ふ
散骨を望む母なり花吹雪
囀や内弁慶は親ゆづり
しなやかな竹のものさし昭和の日
新緑や鎖骨美人とすれちがふ
骨密度平均値なり新樹光
くちなしの螺旋ほどけて匂ひけり

屋久島  小能見 敦子
くぐりゆく屋久島の径涼しかり
屋久島へ遺影連れゆく夕薄暑
老鶯は迷ひなきかに声澄める
風生れて金の波だち麦の秋
西瓜の花咲きし行灯囲ひかな
種撒きて自動水掛け見廻れる
麦刈を終へざるままの梅雨入かな

青嵐  藤沢 正幸
遠筑波動かぬ雲や田水張り
触るるものみなやはらかし山若葉
鉄線花蔓の行方の定まらず
ばら園の薔薇のアーチで始まれり
青嵐絵馬堂の絵馬騒ぎ出す
雲の峰神の山より立ちにけり
入道雲掴みかからんばかりなり

単衣着て  中島 勝郎
涼をとる古利根ゆつたり流れけり
鈴本に受け継ぐ伝統夏の宵
蛍舞ふ源平かつせん彩の里
さつき咲き古稀を迎へし今朝の風
単衣着てオペ待つベンチ言葉なく
手術終り心身ともに五月晴れ
退院の渋滞に遇ふ薄暑かな
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リレー俳談 生かされて  大竹 仁
2008-10-29-Wed  CATEGORY: 昴 9号
リレー俳談

 生かされて  大竹 仁

 中国で起きた大地震、死者は三万人を超えた未曾有の規模となりました。
 そして救援活動の急がれる中、何と中国は、当初、日本からの緊急救援を拒
んだのです。
 それに対して福田総理は「それぞれ国には事情があるのだろう」と。この言
葉には、私は芯から腹がたちました。なにをおいても救援活動を優先させる事
態なのに、まさに他人事。この男は真の指導者ではないとの実感、人命よりも
優先するものがこの世の中にあるでしょうか。
 さて、私も去年の今頃五月から六月にかけて心不全による大病をし、生死を
さまよったのです。そして十五日間の入院、「根の国」を垣間見たのでした。
 「三途の河原」までは行きませんでしたが、いろいろな幻影幻覚を見たので
す。
 先ずは幾何学模様な細工絵、そして何と江戸時代の長屋風景のキネマストリ
ー、今でも鮮明に覚えているのです。まさに奇跡の生還でした。
 そして、私に改めて生きる喜びを、俳句が教えてくれました。特に一般病棟
に移ってからは、その有り余る時間を、日記形式による俳句三昧に過ごしまし
た。
 「花鳥風詠」にはあきたらず、老川指導者の提唱する「内観造型」に魅せら
れて、更なる自己表現力を高めてきました。
 まさに生死を超えた体験を力とし、更なる精進をと思っております。
 今、私は二箇所の句会、そして三箇所への指導、なかでも、介護施設二箇所
へリハビリの一助としてお手伝いをしております。不自由な体、言語を超えて
作句に勤しむ姿には、嬉しさが溢れているのです。
 そして今回、はからずも、市の「藤まつり俳句大会」に五人の方が入選した
のでした。これには本人の喜びは勿論のこと、施設を挙げての喜びとなり、感
謝をされたのです。つくづく今思うことは、俳句をやっていて良かったと言う
実感であり、まさに俳句に生かされている余生だと思っております。

 撫で肩となりし余生の更衣


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