21世紀をたのしむ「昴」俳句会
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他誌管見  岸本 正子 (其桃・対岸・鶴・蕗・松の花)
2008-10-28-Tue  CATEGORY: 昴 9号
他誌管見  岸本 正子

(其桃・対岸・鶴・蕗・松の花)

「其桃」5
  主 宰 中村石秋
  発行所 下関市竹崎町一―十六―三
  主宰作品「ぶらんこ」より

 からからと指刺すまでに鹿ひ尾じ菜き干す
 ぶらんこを漕ぎ出し空に水脈を足す
 さくら咲く樹影百年したたらす

  同人作品より

 看護師はまつ白な風春動く  中井芳穂
 母見舞ふ雪の重さを傘にうけ  林 君子
 折るほどに指に情わく紙雛  田村迪子

  其桃集より

 あやに美し枝垂桜の垂るる寺  宮崎文恵
 海鼠千裂き終へ母の顔となる  矢口鈴子
 音もなく降り積む雪や永平寺  井手澄子

 「横山一石句集『朧月』に寄す 中村石秋」
 根っからの下関人であり、根っからの国鉄育ちであった一石さんが此の度
家族からの米寿の祝いに奨められて句集を発刊されることになった。
こんなに美しい話はない。と主宰が冒頭に述べられた、
その文中よりの著者の句を左記に。

 汽車発たす掌に真白き夏手袋
 炎天を打つたび動く釘袋
 兵たりし脳裏をよぎる威し銃
 栗飯や耳の底から母の声
 朧月米寿へ一歩踏み出せり

 「桃蕾集」の選者松井童恋氏は「俳句の季題は置いただけで光るよう」と
お書きですが、此の一言もまた、光りを放って…。


「対岸」2008・5
  主 宰 今瀬剛一
  発行所 茨城県城里町増井一三一九
  主宰作品 「三月」より

 来し方に踏みし土筆の数思ふ
 とめどなき芽吹きの中に母校あり
 冬籠り一書を抜けばみなくづれ

 「赤沼登喜男氏」を悼む主宰の文章に、心底から胸を打たれました。
「非常に男っぽい、それでいて繊細な感覚の持ち主で、私を心から信じ病を
押してでも私の出る句会にはどこまでも付いてきてくれた…(以下略)。」
との文中から故赤沼氏の同人としての、はたまた主宰の弟子としての御心の
有り様の純粋さ、それ故の潔ぎ良い身の処し方等、迸るような一途さが
伝わってきまして、心が引き締まりました。自分の抱くものの粗末さに愕然
とすると共に、主宰のどうあっても「ときお氏」へ餞のお言葉をとの熱い
御心情が推察され、目頭が熱くなりました。真摯な清流は暗渠を経て
地上に出、更に天上の浄水として輝きを彌増されたことと思います。

  晴天集より

 灯をともしつづけて春となりにけり  藤井美智子
 やがて止む間遠さであり牡丹雪  小松道子

  高音集より

 立ち止るひとを映して春の水  飯島かほる
 麒麟見るキリンは春の雲をみる  篠田たもつ

 「母の盥   安嶋都峯」
 母上・盥・其の時代にまつわる思い出の数々。その最終章、入院中の母上が
亡くなる三ヶ月前、看護師さんに連れられ屋上で辺り一面の桜をご覧になった
折、「病気になっても桜が見られて、ありがとう。」と仰られた…と。
  対岸集 今瀬剛一選より

 白鳥の羽の中なる太き骨  森戸 昇
 雑巾をきちんと干して卒業す  井上千代
 のどけしや頬杖の跡うつすらと  野尻凱子


「鶴」五月号
  主 宰 星野麥丘人
  発行所 国分寺市並木町一丁目二一―三七
  主宰作品 「百椿居」より

 春は曙昔むかしの百椿居
 梅咲いて袴穿く日のありにけり
 遠き日の近くなる日や春愁

  飛鳥集より
 ばらいろの話にうかと冴返る  橋本末子
 春光や髪飾りして女車夫  今福心太

  栗羽集より
 顔の上波流れゆく雛かな  金田初子
 白き雲美しバレンタインの日  兼藤 光

  鶴 俳句  星野麥丘人選より
 紐固く旧正の荷の届きけり  大山千代子
 六十を越えてバレンタインの日  うてなミヨ

 主宰の、うてな氏の句評を要約させていただきます。昭和四二年、当時の
鶴の話題作である矢野絢けん氏作の「六十も女盛りや初鏡」を掲げて
「初鏡とバレンタインの日では季語が違うだけじゃないかと言われそうだが、
この季語の違うところが大事なところだ。ここに四十年の時間の流れが
はっきりと窺えるのである。切字も写生も大事だが季語のあしらいに意を
用いることを忘れてはなるまい。彼岸も過ぎたから「暖かや」、なごやかな日
だから「麗かや」、ゆったりしているから「長閑さや」では困るのである。」
しっかり心得たいお言葉。

  「一句誕生」
 冬港ハーレーダビットソン揃ふ  冨田佳子

 作者は神戸在住、神戸埠頭を舞台の「ハーレーダビットソン・クリスマス
パーティー」整然と並ぶ百台を越える、磨きぬかれた各人のバイク、流れる
ジャズ、出航する観光船、そしてバイクを中に数人の若者と話していたひとは
細身で中背、白髪と黒のレザーが良く似合う輝くばかりの笑顔を持つ美しい
男性であった、一体どういう人だろうかと気になった…。そして誕生したのが
右のお句、全に神戸の魔性めく魅力が背景にあってこその作品と存じます。

  「自選句欄管見 光本正之」より
 あてもなく来て深川のさくら鍋  江口千樹

 光本氏は「一読して私の心をとらえた此の句何と説明したら…(中略)
長年にわたって身についた俳句が自然にこぼれたかのような句。」と評されま
した。砂地に水がしみ込むように納得する評と読ませていただきました。


「蕗」 5月号
  主 宰 倉田絋文
  発行所 別府市中須賀元町八組
  主宰作品 岬―近詠―より

 ながながと岬が春をひろげけり
 枝に揺る椿を見てる落椿
 灯ともして即ち春の障子かな

  雑詠  絋文 選より
 東の塔西の塔初明かり  難波三椏
 表札に猫の名増えて春うらら  稲田眸子
 読みどほりバレンタインのチョコレート  田中三樹彦

 右三句の主宰の評を要約させていただきます。難波氏作品、寺院の広さと、
その空間の業が歴史の中に浮き彫りにされたような清浄さが漂う。
「初明かり」でいっそうの厳かさがあり(中略)心洗われる一句。
稲田氏作品、まさに家族の一員。天に授かった生命は一つとして粗末に
出来ない、猫の名は?(お一人お一人想像して下さい。(以下略))
田中氏作品「どう読んでいたのか相手の心を…」。事が「バレンタインの
チョコレート」であるから楽しい。(さてホワイト・デーはどうするか。
それも答えは出ているのであろう。ホホホ)。とありますが、ご批評から
荘厳清澄の気が、また弱きものへの深い御情愛の生命讃歌が…と感じ入って
おりましたら、なんと次はお茶目な「ホホホ」でした。
作者への「してやったり」の主宰の御顔が目に浮びまして当方は「ウフフ」と
なりました。なにしろホワイト・デーは帰りはコワイ天神様の細道ですもの。

 さくらみてひこうきとばしすべりだい  5才 さくまぜん
 葉牡丹の渦魂を包み込む  99才5ヶ月 坂手有里


「松の花」 5
  主 宰 松尾隆信
  発行所 平塚市立野町七―九
  主宰作品 湘南抄より

 立春の山河朝日に洗はるる
 まつさきに紅梅昏れてゐたりけり
 一番に来るてんぷらの蕗の薹

  竜紋集 自選より
 七千トンの船上にして陽炎へり  牧野眞砂子

  松の毬集 自選より
 売りつくしセール賑はふ余寒かな  あべみゑ子

  翠嶺集(同人作品)松尾隆信選より
 啓蟄や声はり上ぐる測量士  小菅恒子

  松の花集 松尾隆信選より
 榾燃ゆる匂ひのなかの初音かな  松尾和代
 霾ぐもり兎は飼育小屋に老い  岡本利英

 岡本氏の作品、主宰の評の一部に「黄砂に汚れ、ただもぐもぐと口を
動かしている老いた兎。現代の兎の姿、どこか人間臭い兎だ。」
とありますが、作者の着想の妙もさりながら、兎の彼方の大局を
見据えられた主宰の御言葉が、ズンと強かに胸内を震撼させました。
 意義も奥も深い作品が揃った誌と存じます。 完

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