21世紀をたのしむ「昴」俳句会
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新句集紹介  小林 量子
2008-10-28-Tue  CATEGORY: 昴 9号
新句集紹介  小林 量子


 句集「椅子」  久行保徳
 昭和二十一年徳山市生まれ。昭和四十二年より俳句を始め、現在「清玄」無
鑑査同人。「草炎」主宰。「椅子」は第一句集である。
 昭和四十四年から平成十九年までの作品を収めた句集は、師の、故大中祥生
氏の「俳句の伝統は、醒めた主体が掴み直す人間性と、その風土とのかかわり
の中にこそある」との精神を大切に、俳句を追い続けた珠玉の作品が並ぶ。

 日の渦へ椅子磨き合う喪の家族
 鳥雲に飢えてきらりと喉ぼとけ
 安定のふりして戦ぐ花すすき
 咳いて拈華微笑の椅子さがす

 無季俳句、口語俳句、自己の内的風景を詠った句、心象や暗示等々、多岐に
わたる作者の世界が展開する。

 冬菜漬く母の腰より暮れにけり
 四万十の水の昂り鳥わたる
 産土の水に手浸す帰省の子

 比較的平明な句にも深い味わいがあり、心惹かれる佳句が多い。

 梅の椅子優しい昼を濡れている
 夕桜闇やわらかに狂いだす

 作者の美意識の奥に存在する深層心理の描写が魅力的な句を挙げ、この二句
に出会えた喜びに浸っている。
 山口県在住。現代俳句協会会員。山口県現代俳句協会会長。 〈東京四季出
版刊〉


 句集「二重唱」  泉田秋硯
 大正十五年松江市生まれ。昭和二十年京大俳句会幹事長、現在「苑」主宰。
「二重唱」は「春の輪舞」「梨の球形」「苑」…「黄色い風」に続く第十句集
である。
 俳句歴六十三年という著者は、「芭蕉や虚子には詠めない現代人の句を作ろ
うと志した」とあとがきに記されている。単調な句の羅列で読者が読み飽きる
ことのない句を選んだという言葉通り、一気に読み終えた。

 凍裂やどの樹討死せしならむ
 片蔭を刺客のごとく急ぐなり
 風花に唇吸はれけり吾に返る
 囀の此処を静かな場所といふ
 落葉絶叫人に聞えぬ波長にて
 蜃気楼おおと全員釘付けに
 走るなり寝るなりどうぞ大花野

 俳句とは、かくも自由で楽しいものであったかと、改めて自在な発想に驚き、
句の面白さを噛みしめた。

 半端酒畳鰯がうれしくて
 冬眠を終へたる心地退院日
 雛壇に不埒な猫の眠りゐる
 人の眼に曝されどほし牡丹散る

 前立腺癌、胆石摘出と病を克服した著者の、しみじみとした佳句にも惹かれ
た。
 宝塚市在住。俳人協会会員。兵庫県俳句協会理事。 〈文学の森刊〉


 句集「深雪晴」  高橋久子
 昭和三年新潟県生まれ。昭和六〇年より俳句を始め、現在「海原」同人。
「深雪晴」は第一句集である。
 五〇年余り新潟県の雪深い地に暮らし、その後、神奈川県に移り住んだとい
う著者の、故郷越後の句には、土地への深い息づかいが伝わってくる。

 組稲架や此処は越後のど真中
 深雪晴越後つついし親不知
 仏壇をていねいに拭き菊日和

 二句目は句集名となった句で、越後つついし親不知と畳み掛けるリズムも
心地よい。

 赤い羽根一番小さき手より受く
 雨が好きひとりが好きと蝸牛
 亡き人を一羽に重ね冬の雁
 足元に秋の来てゐる水の郷
 秋草に風低くきて語りだす

 女性らしい柔らかな感覚の句が、安らぎを誘う。細やかな物象に対するとき、
著者の見せる童心が鮮やかに表出されるようである。
 東久留米市在住。俳人協会会員。 〈文学の森刊〉


 句集「花野径」  内藤さき
 昭和七年生まれ。昭和六〇年より俳句を始め、現在「浮野」同人。「花野径」
は、第一句集である。
 平成元年の天城俳句大会で特撰句に推された「天城嶺の雲に近づく花野径」
にて、句碑建立の栄を得、この句碑の句より句集名が付けられている。
 愛着の深い郷土天城の風光をふまえた自然詠には、柔らかな詩情が溢れる。

 海光を一すぢ容るる春の川
 山葵田の水の夕ふれ初蛍
 谷川の音に傾く合歓の花
 揚舟を伏せて浜辺の小春かな

 また、身辺を詠った句から滲む細やかな感性は、数々の佳句を生む。

 たそがれの起居を透かす青簾
 また一人掌を浸しゆく水の秋
 母の手の縫い目美し秋袷

 のびやかな諷詠を貫く透明な感性に誘われ、しばし、伊豆の豊かな自然の中
に浸ることができた。
 句集の最後を飾る句も、見逃せない。

 枯芙蓉かへらぬ日々の美しく

 静岡県在住。俳人協会会員。 〈文学の森刊〉


 句集「乾坤風韻」  山内一申
 大正九年静岡県生まれ。昭和三〇年頃より俳句を始め、現在「秋」同人。
「轍」同人会長。「乾坤風韻」は第一句集である。
 八十歳まで大学の教壇に立ったという著者は、専門の流通業界での海外視察
は五十回を越え、その折々の海外詠をまとめ、この句集に収められている。

 大ナイル大ピラミッド大西日
 炎帝は怒り地中に王の墓
 百両の貨車一条の大枯野
 ロッキーへ道一本の麦の秋
 パリ残暑背中はどれもジャンギャバン
 水光り西湖白堤楊柳やなぎ萌ゆ
 天も地もなくフロリダの大夕立シャワー
 死に向かふ兵らの凭りし壁冷ゆる

 カイロ、カナダ、パリ、中国、アメリカと壮大な風景の中にあって、その臨
場感と重厚な迫力を余すところなく表出している。
 また、旅先における感慨を詠った句にも惹かれた。

 片言の日本語群れて夏饐える
 秋の夜の孤独にかへるドアチェーン
 穂薄や行くも帰るも後ろ髪

 川崎市在住。 〈角川書店刊〉


 句集「安宅」  渡 たみ
 大正十三年徳島生まれ。六十歳より俳句を始め、現在「馬酔木」同人。
「安宅」は第一句集である。
 安宅は著者の生誕地であり、阿波水軍の基地でもある。また御祖父が水軍の
侍であったことなどから、句集名を名付けたと記されている。

 雛の宴父のあぐらに子の二人
 ぶらんこも席に野外の児童劇
 父の声ひときははづれ卒業歌

 八十歳まで自宅で、中高生に数学を教えていたという著者は、今は塾をやめ
俳句を日々の楽しみに過ごしているという。

 曲り屋に虫鳴き遠野物語
 きちきちや夕日染み入るでんでら野
 鈍行の切符一枚花めぐり
 青鰻や母の紬の身になじみ

 最後に、精神の充実した日々を過ごす中から生まれた、現在の境地を詠った
句を取り上げたい。

 一心を杖に託せり霜の声

 徳島市在住。俳人協会会員。 〈角川書店刊〉

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