21世紀をたのしむ「昴」俳句会
スポンサーサイト
-----------  CATEGORY: スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ページトップへ
新句集紹介  昴 8号
2008-06-29-Sun  CATEGORY: 昴 8号
新句集紹介  小林 量子


  句集「山暮し」 諸田宏陽子

 大正十五年静岡県生まれ。昭和二十一年より俳句を始め、現在「山暦」同人。「山暮し」は「山村水郭」に続く第二句集である。大井川上流の四季折々の風情と暮らしを詠んだ句が多いことから句集名を「山暮し」と名付けたとあとがきにある。土の香と季節の味わいのあふれた句集は、農村風景や茶摘みの情景、地方の風習の名残も楽しめる心豊かな句集である。
  禁酒して花見の衆の端に居り
  手掴みて捕りし鰍に睨まるる
  売りに出す山に囀り始まれり
  当分は電話で済ます暑さかな
  茶摘女へSL汽笛鳴らしけり
 静岡は気候温暖な、前に海後ろに富士の勇姿という羨ましい風光の地である。この地で生まれ育った作者の土着の句には、人を惹き付ける力がある。
  猫の目が屋根に光りて星月夜
  劣等感などは無いぞと羽抜鶏
  相続を拒否されし山笑ひけり
 一句目は印象鮮明で透明感にも魅力がある。二句目三句目の俳諧味にも惹かれた。自然の中での素朴な生活の結晶であり、作者の揺るぎない魂から生まれた珠玉の句集である。
  静岡県在住。俳人協会会員。  〈北溟社刊〉

  句集「土笛」 島 雅子

 一九四〇年神戸市生まれ。一九九三年「みちのく」入会を経て「門」入会。現在「門」同人。「土笛」は第一句集である。句集名は「雪の日のこの土笛のぬくきかな」より。頁を繰り進む程に、つぎつぎと面白い句に出会う。
  今がいま過去となりたりかなかなかな
  個性派と頑固のあひだ榠櫨の実
  水飲んでかたちになってゆく寒さ
  多数派にはならぬ美学や囀れり
  吾のなかのもひとりの奴狸汁
 少し違った視点から醸し出す個性的な句が読者の胸をワクワクさせる。選ばれた言葉一つ一つに作者の並々ならぬ感性がかいま見える。また次の心の内面を抉った数々の句にも惹かれた。
  うすらひと水との間こころ置く
  だしぬけの涙や水母裏かへり
  無名なるしあはせもあり梅真白
 最後に、主宰の鈴木鷹夫氏の序文の最初に取り上げられた、妖しさと魅惑を秘めた句をあげる。
  薔薇の湯に身をまかせをり遺体めき
  相模原市在住。俳人協会会員。音楽教室主宰。
〈角川書店刊〉

  句集「初冬」 鹿野佳子

 昭和九年生まれ。昭和五五年「朝」入会。平成一八年「琉」入会。現在「朝」同人。「初冬」は「花束」に続く第二句集である。柔らかな言葉が醸し出す句には、読む者の心を優しく包む。
  葭切やはなれ住むとは想ふこと
  ゆっくりともの言ふ人と秋惜しむ
  塗椀の照りほのかなる時雨かな
  柿の花ほたりと山気ゆるみけり
  鈴虫の鈴ひと振りを待つ夜かな
 作者の詩心に柔らかに包まれ心地よい。作品の一つ一つの詩情は、作者の生きてきた日々の耀きとして投影されている。心の内面を詠った句にも、しなやかな心情が表出されている。
  見つめゐるこころの波紋水すまし
  咳の子を咳ごとあつく抱きけり
  好き嫌い激しく生きて水仙花
 あとがきに「小春日和」には「晩年」の意味もあり、静かな晩年を望む気持ちで句集名を選んだ、と記されている。読み終えて、すぐ第三句集を待つ気持ちになった。
  横浜市在住。俳人協会会員。 〈角川書店刊〉

  句集「有頂天」 多々良敬子

 昭和十三年東京都生まれ。昭和五十七年より俳句を始め、昭和五十八年「さいかち俳句会」入会。現在「さいかち」同人。平成十五年さいかち賞受賞。「有頂天」は第一句集である。有頂天は仏教用語だが、舞い上がって自分を見失わないように、地に足を着けて人生を送る、という趣意だと、あとがきにある。
  少しづつ緩む身の内薄氷
  有頂天より垂直に声冷まじや
  この枯木千手観音かもしれず
  ほうたるや眼凝らせば火の記憶
  落日や火の粉のやうに小鳥くる
  噴水の噴かねば景の定まらず
 単なる写生に終わらない句の数々。作者の広い教養と人生経験が滲み出る。事柄と季語の配合の巧みさ、その底に流れる人となり、それらが結晶した句が心に響く。文学や歴史への造詣も句の端々に読み取ることが出来る。最後に、明日香を詠まれたと思われる句を抜き、終わりとする。
  みささぎへ帰化す背高泡立草
  石棺の中は緋の色小鳥来る
  東京都在住。俳人協会会員。 〈梅里書房刊〉

  句集「梅日和」 春川園子

 昭和十三年東京生まれ。平成六年「海嶺」入会。「海嶺」終刊後、平成十二年「花暦」入会。現在「花暦」同人。「梅日和」は〈末の娘の婚の黒髪梅日和〉より。第一句集である。身辺を詠んだ句には、女性特有の柔らかな情愛が溢れていて共感を呼ぶ。
  嬰の手の届かぬやうに初雛
  娘は今も母に厳しき夏大根
  病みて知る夫の情けや草の花
  病名を知らされ寒を耐へゐたり
  さくらんぼ含み卒寿の母とをり
 特に、句集名となった梅日和の句は、清々しく明るい光と初々しさに溢れている。また、大景を詠み込んだ句の伸びやかさにも惹かれた。
  帆船の動くともなく冬はじめ
  鉄塔に人働けり山の秋
  山畑に農夫ひとりや大根引く
  川崎市在住。俳人協会会員。〈ふらんす堂刊〉

  句集「白玉椿」 熊倉愛子

 大正九年東京生まれ。昭和五十五年「春嶺」入会。平成五年「海嶺」創刊入会。平成十年「花暦」創刊同人。現在「花暦」同人会長。「白玉椿」は第一句集である。
 視野が狭まり、視力が衰えてからの選句作業は、如何に大変であったか想像するだけで畏敬の念で一杯になる。
  編み返す夫のセーター身幅つめ
  癒ゆるあてなきを看護りて暮の秋
  朱を入れし己が戒名うそ寒し
  大榾の形くづれず燠となる
  真二つは倅まかせの大西瓜
 初期の句を思いきって削られたという珠玉の句集は、取り上げなかった句に心が残る。ご主人が亡くなられてから、堰を切ったように旅をされたという旅の佳品を取り上げたい。
  緑蔭に媼綿打つ西安路
  出羽訛厳かにして薪能
  立冬を冬なき国の旅にあり
 最後に、一番心を惹かれた句
  家も吾も白玉椿と共に老ゆ
  群馬県在住。俳人協会会員。 〈角川書店刊〉

スポンサーサイト
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL


余白 Copyright © 2005 21世紀をたのしむ「昴」俳句会. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。